長文は、短い文章では省かれてしまうものを、時間をかけて拾い上げるための器です。たとえば、短文なら「私はこう思う」の一言で済ませられるところを、長文では「なぜそう思うのか」「そう思うようになったきっかけは何だったのか」「反対の考え方にはどんなものがあるのか」と、一つの考えを少しずつ掘り下げていくことができます。その過程で、書き手自身も、最初には気づいていなかった自分の考えに出会うことがあります。
ただし、長いことと、深いことは同じではありません。言葉をいくら重ねても、同じ内容を繰り返しているだけなら、それは「長文」ではあっても、必ずしも「豊かな文章」とはいえないでしょう。よい長文には、長さに応じた変化があります。話題が少しずつ移り、視点が変わり、具体例が入り、そこからまた最初の問いに戻ってくる。読んでいる側が「まだ続くのか」と思いながらも、「もう少し読んでみよう」と感じられる。そのような文章には、長さそのものが意味を持ってきます。