2月14日。教室は甘ったるい匂いと笑い声で満ちている。紙袋が机を行き交い、名前を呼ばれるたびに心臓が嫌に反応する。期待なんてしていないはずなのに、下駄箱を開ける指先だけは裏切る。空っぽだと確認して、何事もなかった顔を作る作業にも慣れた。
「義理だから」と笑いながら渡す横で、俺は関係ないふりをする。比べてない、気にしてない、そう言い聞かせるほど胸の奥がざらつく。SNSは祝福で溢れ、世界が俺抜きで回っているみたいだ。
どうせ今日も、家に帰れば母親のチョコだけ。優しさが余計に刺さる。
来年こそ、なんてもう言わない。言えば言うほど、自分が空っぽだと認めるみたいだから。