毎晩、隣の部屋から壁を叩く音が聞こえる。最初は気にしなかった。古いアパートだから、配管か何かだろうと思っていた。
ある夜、トントン、トントンと音が続いた後、初めて「数」が違うことに気づいた。一回目は三回、二回目は四回、三回目は五回——数が増えていく。
気になって壁に耳を当てると、かすかな声で何か数えているのが聞こえた。「いち、にい、さん……」
翌朝、管理人に聞くと、隣の部屋はずっと空室だという。鍵もかかったまま、誰も入っていない。
その夜、また音が鳴った。今度は十回。
そして声がはっきり聞こえた。「じゅう……あなたの番です」
それ以来、壁を叩く音は聞こえなくなった。代わりに、私の部屋の中から聞こえるようになった。